[TCHB-060] とある男の秘録集17
03:26:00 | 2026-03-06 00:00:00

とある男の秘録集17

    3.7
60 0
TCHB-060 / tchb00060
夜、パソコンの前で動画をアップしながら、私は最近話題になっていた一冊の本を読んでいた。
本の題名は出さないが女性同士の物語だ。

「欲望」と「消費」。
その言葉が、やけに胸に残った。

私の仕事は、女性の卑猥な動画を編集して投稿することだ。
「これ、伸びるから優先な」
「感情はいらない。数字だけ見ろ」

おじさんは、いつもそう言っていたことを思いだす。
最初は、その偉そうで冷たくて、人を道具みたいに扱う態度が嫌いだった。
顔を見るだけで、胸の奥がざらついた。

それなのに、いつの間にか私は、
その人の一言で一喜一憂するようになっていた。

褒められれば安心して、
無視されれば眠れなくなる。

気づけば、画面の向こうの女性たちを、「素材」や「商品」としか見なくなっていた。

その本の中では、女たちは堂々と食べ、欲し、選び、生きていた。自分の人生を、自分のものとして抱きしめていた。

なのに私は、
誰かの欲望を並べて、
誰かの評価を食べて生きている。

ページを閉じて、画面を見る。
顔のいい女。
体のいい女。
セフレによさそうな女。
嫁にしたそうな女。
結局、
男たちに無茶苦茶にされ、
数字に変えられる人生。

そして、それを淡々と押す私の指。
いつからだろう。
私は、おじさんみたいになりたいと思うようになっていた。

強くて、冷たくて、
何も感じない人間に。

そうなれたら、この仕事も、この毎日も、
きっと楽になると思っていたのか。

でも、本を読み終えた今、
その考えが、少しだけ怖くなった。

私はまだ、ここにいるし、パソコン画面の前で迷いながら、
それでも指を止められずにいる。

それでも、「おかしい」と思えている自分が、
まだ残っていることだけが、
小さな救いです。

Gallery Pics

f ;