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ジャン・ギャバンとジャン・ポール・ベルモンドのフランスの二大俳優共演の「冬の猿」は、1962年度製作の映画で、日本での公開が1996年で、監督が「ヘッドライト」の名匠アンリ・ヴェルヌイユ。同じヴェルヌイユ監督で、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの二大俳優が共演した、粋でクールで洒落たギャング映画の「地下室のメロディー」をワクワクしながら観たフランス映画ファンとしては、このギャバンとベルモンドが共演していたという、伝説的な幻の映画を観ることができました。映画の舞台は、ノルマンディー海岸近くの、とある田舎町。ギャバンが、そこのホテルの主人で、ベルモンドが泊り客。この親子ほども年齢の離れた、二人の男の心の触れ合いが、淡々と静かに描かれていくのですが、何の劇的な起伏もなしに、あまりにも淡々としすぎています。キャバンとベルモンドとヴェルヌイユという当時としては、フランスの豪華な顔合わせなのですが、とにかく質素で地味な映画なんですね。けれども、この映画を観終えての感想は、なかなかどうして捨て難い、良い味わいを持った映画で、大変面白いと思いました。二人は雑貨屋へ乗り込み、店長と一緒に海岸で、何と花火を盛大に打ち上げるのです。とにかく、この花火が凄い花火で、町中大騒ぎになり、警察まで出動して来る事になります。そこで、ギャバンが大声でこう叫びます。「祭りはまだまだ、これからだあ!」と-------。ここにきて、ああこの映画は、異郷への旅を夢見つつも、わびしく厳しい現実というものに、甘んじなければならない二人の男の、"人生一度だけの祭り"なのだなと、はたと納得させられるのです。そして、訪れる翌日の祭りの後の空虚な静けさ、わびしさ、喪失感------。この優れて映画的な、ヴェルヌイユ監督の演出が実にうまいんですね。駅のベンチに一人淋しく座るギャバンを捉えたショットの美しさは、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ以前のフランス映画が持っていたであろう、古き良き時代の懐かしい雰囲気を醸し出していて、本当に息をのむような見事なショットでした。アメリカのハリウッド映画にはない、淡々として地味ではあるが、情熱を内に秘めた、フランス映画の粋で洒落た感覚のデリケートな味わいの映画というのも、たまには良いものです。
シネマの風さん
2025-04-14粋で洒落た感覚のフランス映画の小品「冬の猿」
ジャン・ギャバンとジャン・ポール・ベルモンドのフランスの二大俳優共演の「冬の猿」は、1962年度製作の映画で、日本での公開が1996年で、監督が「ヘッドライト」の名匠アンリ・ヴェルヌイユ。
同じヴェルヌイユ監督で、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの二大俳優が共演した、粋でクールで洒落たギャング映画の「地下室のメロディー」をワクワクしながら観たフランス映画ファンとしては、このギャバンとベルモンドが共演していたという、伝説的な幻の映画を観ることができました。
映画の舞台は、ノルマンディー海岸近くの、とある田舎町。
ギャバンが、そこのホテルの主人で、ベルモンドが泊り客。
この親子ほども年齢の離れた、二人の男の心の触れ合いが、淡々と静かに描かれていくのですが、何の劇的な起伏もなしに、あまりにも淡々としすぎています。
キャバンとベルモンドとヴェルヌイユという当時としては、フランスの豪華な顔合わせなのですが、とにかく質素で地味な映画なんですね。
けれども、この映画を観終えての感想は、なかなかどうして捨て難い、良い味わいを持った映画で、大変面白いと思いました。
二人は雑貨屋へ乗り込み、店長と一緒に海岸で、何と花火を盛大に打ち上げるのです。
とにかく、この花火が凄い花火で、町中大騒ぎになり、警察まで出動して来る事になります。
そこで、ギャバンが大声でこう叫びます。「祭りはまだまだ、これからだあ!」と-------。
ここにきて、ああこの映画は、異郷への旅を夢見つつも、わびしく厳しい現実というものに、甘んじなければならない二人の男の、"人生一度だけの祭り"なのだなと、はたと納得させられるのです。
そして、訪れる翌日の祭りの後の空虚な静けさ、わびしさ、喪失感------。
この優れて映画的な、ヴェルヌイユ監督の演出が実にうまいんですね。
駅のベンチに一人淋しく座るギャバンを捉えたショットの美しさは、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ以前のフランス映画が持っていたであろう、古き良き時代の懐かしい雰囲気を醸し出していて、本当に息をのむような見事なショットでした。
アメリカのハリウッド映画にはない、淡々として地味ではあるが、情熱を内に秘めた、フランス映画の粋で洒落た感覚のデリケートな味わいの映画というのも、たまには良いものです。